Voyage to Crafts ものづくりのであい “デニムを織る”

各地の作り手を訪ねた旅路の記録。
瀬戸内の山間をたどり向かったのは広島との県境にほど近い岡山・井原(いばら)の地。
綿織物と藍染の手仕事を歴史背景に持つ、国産デニムのルーツとも言われる地域です。
歩むに連れて聞こえてくるのは昔ながらの力織機が力強く動く音、その源を訪ねました。

デニムを織る
2025.05.14

photo: Masahiro Sakabe
text: Yuko Enjoji



広大な敷地にそびえる、歴史あるデニム生地織工場。
その内部へ一歩足を踏み入れると、耳を打つのは無数の織機が立てる大きな音だ。



天井の高い工場内には、びっしりと並んだ大きな織機が、休むことなくデニムの生地を織り上げている。




その中を職人たちが一台一台の機械を丁寧に見回り、正確に動いているかを
細かくチェックし、わずかな異音や振動の違いも見逃さない。



この工場では、1時間に織り上がるのはおよそ5メートル弱の生地。
決して効率重視とは言えない数字だが、それは「風合い」や「手触り」、
さらには「将来の色落ち」や「ちぢみ方」まで計算された丁寧な仕事の結果だ。


デニムの生地にも種類があり、粗めのものから高密度のものまでさまざまだ。
織機による大量生産でありながらも、糸の種類を変えるのは機械ではなく人の手。



さらに驚いたのは、最終的な検品も人の目で行われているということ。
キズや汚れなど、どんなに細かい異常も見逃さないためだ。

無機質に見えるデニム生地の向こうには、目には見えにくい職人の技と誇りが織り込まれている。


Directer's Note
Nozakiのひとりごと
こちらの織元とのお付き合いは40年前、先代のお父様との出逢いから始まりました。
とにかく豪快な方で、打ち合わせの前に山と盛られたゆで卵を食べながらお茶をのみ、
「ワシがとったマムシ酒を呑むか」と言われ、流石にお断りをすると「蚊に刺されたらきくから
持って帰れ」と小分けのビンで渡された(においがきつかったー!!)のを思い出します。生地の話も「おー、わかった、わかった」とすぐに終わってしまうので
生地が織り上がるまで心配なのですが、上がってくるのはしっかりと思っていた通りの品。
長年培った野生の感覚がある方でした。今では息子さん、お孫さん、若い方々が頑張っている、活気のある機屋(はたや)さんです。
monologue by Masamistu Nozaki
TIGRE BROCANTE Brand Directer
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