Voyage to Crafts ものづくりのであい “家族のいとなみ”

各地の作り手を訪ねた旅路の記録。
長閑な日和の瀬戸内、デニムの聖地といわれる岡山県倉敷市の児島地区を水島灘の方面へ。
ティグルブロカンテとは長いお付き合い、ご家族で営まれている縫製工場を訪れました。

家族のいとなみ
2025.05.12

photo: Masahiro Sakabe
text: Yuko Enjoji




縫製工場の内部に足を踏み入れると、所狭しと並ぶミシンやアイロンが目に飛び込んでくる。
家族経営のこの工場では、90歳のおばあさんも現役で働いており手慣れた様子でミシンを踏み布を扱う姿が印象的だ。
細かい仕様書を確認しながら、それぞれの担当する場所で作業をしている。
ノミで布の裁断から、ミシンで縫い合わせ、糸の色の指定やポケットの位置など正確に丁寧に製品は一つずつ仕上げられていく。
糸の色を変えては、ミシンで縫っていく。そしてまた糸の色を変えて縫っていく。
とても大切な作業で手間がかかり、機械では表現しきれない“人の手ならでは”の味わいを感じる。
微妙な力加減、布の扱い、仕上がりの柔らかさ――そうした細部が、手仕事には宿っている。
一着一着に時間と心を込めて仕立てられた洋服からは、量産品にはない温もりと家族で一つの物を作り上げている温かさを感じた。

Directer's Note
Nozakiのひとりごと
清水さん(*こちらの工場さん)とのお付き合いは、40年も前からになります。
僕がいた前の会社でデニムパンツを作るとなって、児島の縫製工場にサンプルを依頼する事になったのですが、どうも想うようなイメージにならず。話し合ってもう一度作ってもイメージにはほど遠く…
そんな時に出会ったのが清水さん。お話をすると一緒にそのデニムパンツを作ろう!ということに。一緒に児島の工場を回り、裁断、縫製、カンヌキ、そしてリベット付けまで…夜遅くまでサンプル作りに取り組んだのを思い出します。
糸の色や番手をどの場所でどう使う、ステッチの運針を1インチ間にどのくらいにするか、カンヌキの幅をどうするか、デニムの耳幅をどのくらい出すか、裾の環縫い(チェーンステッチ)は何mm幅にするか…おもしろいほど、とことんこだわって作りました。
そのおかげでイメージ通りのサンプルが出来上がり、また、その時の経験が現場でのものづくりの姿勢の基本になっています。
清水さんは本物のデニム職人であると同時に、ものづくりの同志です。
monologue by Masamistu Nozaki
TIGRE BROCANTE Brand Directer
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